大学院修了生インタビュー第1回

環境情報学研究科 都市生活学専攻
2018年3月修士課程修了

大沼 美朝子さん

このコーナーでは、環境情報学研究科で学び研究した先輩たちが、どのように大学院で過ごして,社会に出て活躍しているかをお届け致します。第1回は都市生活学専攻の大沼美朝子さんです。大沼さんは、特定の条件を基にルールをつくり、その解析に従ってデザインを行うアルゴリズミックデザインの手法を研究に取り入れました。特にユニークなのは、粘菌の生態を観察し、粘菌の成長面での特徴をルールとして建築デザインに取り入れたことです。まさしく自然を建築のルールにする。それを標榜したユニークな研究を行っていました。

大学院時代に特に思い出に残ることは何ですか?
タバコのJTがスポンサーの建築デザインのコンペティションに友人と参加したことですね。都市部の高層ビルの下にある緑地帯の空間を簡単な仕組みで変えられないか、良く出来ないかというのがテーマでした。JTのコンペなのでいすの色だけでタバコを吸う人と吸わない人の分煙が可能になるように「いすとりゲーム」というデザインを提案しました。一次選考では佳作になりました。2次審査にまで進み,資金も得られました.その資金で模型も作って、いすとりゲームの表現を立体的に行いましたが、それが楽しくて大学院時代の良い思い出になっています。修士課程1年のときです。学部での卒業制作よりも大きな規模の作品であり、大学院生として多少の時間もありましたから,思い切ったチャレンジが出来たように思います。こういう時間がとても貴重だと感じます。

修士の研究の内容を教えてください。
私は粘菌の生態に興味を持ち、それが実際に生きて行く中の成長のプロセス、つまりは菌の広がり方、言い換えるとネットワークの広がり方という生き物の成長のプロセスを自然のルールと捉え、それを空間デザインに反映させながら修士の制作を行いました。そういうユニークで面白い前提を置き、粘菌のモジホコリを飼ってみました。生態を観察して成長のプロセスをルールに見立てて可変的な建築空間のデザインを行ってみました。粘菌は、えさの与え方で成長も変わって行きます。その固定的でなく可変的な様子,変容に基づき可変的な空間というものをデザインしたわけです。まさに粘菌の変容に基づきデザインなわけで、自然の摂理に従っています。こういう前提で制作を行いましたから実験的ですし、うまく行く部分もあればうまく行かない部分もあります。本当は粘菌の成長から数式的なアルゴリズムを明確に抽出し、建築デザインに使用出来る「粘菌プログラム」みたいものまで提案出来れば良かったのですがそこまでは修士課程で進みませんでした.修士は2年で意外に時間がないものです。
現在勤務する設計事務所では何をされていますか?
リサーチエンジニアという業務で、研究を行いながら、新しい将来に適する建築デザインに取り入れられる規則や要素を抽出・整理する仕事をしています。建築の効果を予測する為に、モデリングシミュレイションの作業もしています。環境に適したデザインを実現させるために、ラボのチームをまとめております。学生のアルバイトとも作業をしており、調査の結果からわかった新しい建築の要素がデザインへ実際に反映されると嬉しいものです。色々とプロジェクトにも関わっております。都市計画やインテリア計画、モビリティの改善や新規の提案等も守備範囲です。斬新なアイディアの提案やコンセプトメイキング等も実施するわけですが、そうしたコンセプトワークは都市生活学専攻の修了生が得意とするところです。従来の建築学の大学院では学びにくかったところです。都市の中の人の思いや動き、時間の流れ等も考慮し,都市を良くする為のアイディアやコンセプトをまとめられることが、今の仕事の嬉しい部分です。修士の粘菌の研究の成果と経験が活きる事もあり,全てはつながっているものです。

今後環境情報学研究科への受験を考えている皆さんにメッセージを
修士課程にいるときに、建築インターンシップという授業を履修し、実際に建築の現場を経験出来ました。これがとても役に立っています。今は実務経験2年が間もなくで、一級建築士を目指して行きます。日々色々な活動をしているわけですが、そうしたインターンシップ、また初めに話したコンペティションへの参加が大きな糧になっていることが判ります。学外にも進んで出て行って国内外の人と交流して、競うことも自分の成長で大事だと思います。アンテナをはって、色々な情報や人脈を得たりする事も大切です。大学院の時はそれを実現する時間もあります。ぜひ皆さんにも色々とチャレンジしてほしいですね。

ページトップへ戻る